貧血外来
貧血外来とは
年齢、性別によって様々な原因から生じる貧血を血液専門医が診察します。
貧血の多くは治療可能で、短期間で非常に元気になります。スポーツ選手であればパフォーマンスが確実に向上します。
以前、鉄剤が飲めなかった方もお気軽にご相談ください。飲みやすくする工夫がたくさんあります。
貧血とは
貧血は赤血球を構成するヘモグロビンの濃度が低下している状態で、50歳未満の女性の実に20%が貧血だと言われています。また、その中の4人に1人は10g/dl未満の重度貧血だと報告されています。赤血球の役目は酸素を運ぶことですので、低下することで下表のような様々な症状が出たり、子供では学力や発達の遅れ、大人では仕事の生産性低下に繋がります。貧血が徐々に進んだ方の中には、体が貧血に適応した結果、症状が乏しい方もいらっしゃいますが、心臓には負担がかかっており治療が不要という訳ではありません。
- 貧血の症状
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- 倦怠感
- だるさ
- めまい
- 階段での息切れ
- 眠気
- 頭痛
- 氷をよく食べる
- 髪・肌・爪の状態が悪い
- 傷が治りづらい
- 舌のいたみ
- 口角炎
若年女性に多い鉄欠乏性貧血
若年女性の貧血の多くは鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏の程度は、血液中の鉄、UIBC/TIBC、フェリチンを測定することでわかります。
鉄欠乏性貧血は、月経だけでも生じますが、月経量が増える病気(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など)や、不正性器出血の原因となる子宮がんなどが隠れていないか、婦人科で調べることが重要です。また、妊娠中は体の鉄の必要量が増え、貧血になりやすくなります。母体の貧血は出産のリスクを増やし、胎児の発育にも影響があるため、妊娠を考えている方はあらかじめ貧血を治療しておくことが大切です。
男性と40代以上の女性で鉄欠乏性貧血が指摘されたら、胃や腸にがんがないか、ポリープなどからじわじわ出血していないか、胃カメラと大腸カメラを受けましょう。日本人が罹るがんの1位が大腸がん、2位が胃がんで、これらは40代から少しずつ増えてきます。
「普通の」食事では
鉄は不足しがち
若年女性は1日あたり10-12mgの鉄の摂取が必要ですが、実際の摂取量は6-7mg程度で、1日あたり3-4mgの鉄が不足していると言われています。鉄を多く含む食材は、レバーや赤身肉、まぐろやかつおなどの赤身の魚、小松菜、春菊、ほうれん草、ひじき、豆乳、納豆などです。鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収が上がります。一方、コーヒー・紅茶・煎茶はカフェインを多く含み、鉄の吸収を減らすので飲みすぎないようにしましょう。鉄鍋など鉄の調理器具やスープにいれる鉄球なども効果があるでしょう。
ダイエットも貧血の原因に
日本人の若い女性は「やせたい」という願望が強く、強い食事制限が鉄欠乏性貧血の一因になっています。BMI18.5未満の「やせ」の女性の割合は、昭和56年から平成28年の30年間で大きく増えています(20代15%→20.7%、30代7%→16.8%、40代3.5%→11.2%)。これを裏付けるように、20代女性の平均摂取カロリーは1600kcalと非常に少なく、7-14歳の1820kcal、80歳以上の1620kcalをも下回っています(令和元年国民健康・栄養調査)。同様に、鉄摂取量も20代女性が7歳以上の年齢区分で最も少ない結果でした。鉄は髪や肌の美しさに必要不可欠ですので、貧血を治療することで体の中からの美しくなることが出来ると言えるでしょう。
スポーツ貧血
スポーツをしている中高生は鉄欠乏性貧血のハイリスクです。汗からの鉄喪失に加え、特に持久走では腸管から極微量の出血が生じ、鉄欠乏を引き起こします。女子では、月経の開始と体の成長に伴う鉄需要の増大から、10-14歳に鉄の必要量が最も多くなります(男子は12-17歳)。「最近息が上がりやすい」「タイムが落ちてきた」などの症状があれば、一度貧血がないかチェックしてみるとよいでしょう。
隠れ貧血
隠れ貧血は正式な医学用語ではありませんが、ヘモグロビンは正常だが鉄欠乏がある人、という意味で使われることが多いようです。全員ではありませんが、隠れ貧血の時点で運動能力や認知機能、記憶力が低下したり、疲れやすくなったりすることが知られています。このような症状は、鉄の補充により改善することが研究で示されています。
鉄欠乏以外の貧血
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血も時に見つかります。自己免疫機序によりビタミンB12を吸収できなくなることで生じますが、背景に胃がんや大腸がんなどが隠れていることがあるため、ビタミンB12欠乏があれば胃カメラ・大腸カメラを行います。
また高齢者では骨髄異形成症候群という血液の病気が増えてきます。骨髄で正常の赤血球を作れなくなる病気で、白血病の前がん段階と考えられています。この場合、定期的に採血をして病気が進んでいないか確認したり、骨髄の検査や内服・点滴・輸血などを行います。
貧血の原因は非常に多岐に渡ります。上記疾患以外にも、腎性貧血、甲状腺機能異常による貧血、慢性炎症による貧血、自己免疫性溶血性貧血、多発性骨髄腫などなど。健康診断で貧血と言われたら、まずはその原因が何なのか、貧血外来等でしっかりと調べることが重要です。