予防接種・ワクチン
当院では帯状疱疹、インフルエンザ、肺炎球菌、子宮頸がん、麻疹、風疹、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふく)、日本脳炎、破傷風、A型肝炎、B型肝炎、髄膜炎、狂犬病などのワクチン接種を行っています。国内で流通するワクチンは原則すべて対応可能です。お仕事や学校などで抗体検査や接種が必要な方はお気軽にご相談下さい。
また、海外渡航時に必要なワクチン接種や英語での証明書を希望される方は、専門外来として【トラベルワクチン外来】を開設しておりますので、Webよりご予約下さい。
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は体の片側にピリピリとした痛みが出て、その後水疱を伴う赤い発疹が出てきます。
幼少時に感染したみずぼうそう(水痘)のウイルスが神経に潜んでいて、過労やストレス、加齢による免疫力低下をきっかけに再び活性化して発症します。
帯状疱疹は50歳以上で増加し、80歳までに日本人の約3人に1人がかかると言われています。
帯状疱疹は治療が早ければ後遺症なく治りますが、約2割の方は皮膚が治った後も長期間に渡って痛みが続く帯状疱疹後神経痛に移行します。
帯状疱疹の予防接種は50歳以上であれば誰にでもおすすめです。
帯状疱疹のワクチンには2種類あり、①従来型の生ワクチン、②新しい不活化ワクチン(シングリックス®)です。
ワクチン の種類 |
① 生ワクチン |
② 不活化 ワクチン |
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商品名 | 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」® | シングリックス® |
接種方法 | 1回、皮下注 | 2回 (2-6ヶ月あけて)、筋注 |
帯状疱疹予防効果 | 3年:64%(60-69歳)、38%(70歳以上) | 3年:96%(50−69歳)、85%(70歳以上) 9.6年:89% |
帯状疱疹後神経痛の予防効果 | 約65% | 約90% |
副反応 | 1%未満 | 約10% (筋肉痛、倦怠感、頭痛、震え、発熱、胃腸症状など) 1-3日程度 |
予防効果の持続期間 | 5年はもつが、8年で20-30%まで低下 | 10年程度は持続、10年以上のデータはこれから |
禁忌 | 妊婦・免疫不全者 | 自己免疫疾患、移植患者は主治医相談 |
備考 | 米国では販売終了 費用、副反応の割合が少ない |
効果・持続期間で優る 特に70歳以上では効果に大きな差 |
費用(1回あたり) | 7,940円 | 22,000円 |
帯状疱疹予防効果はシングリックスの方が優れており、特に70歳以上では大きな差があります。持続期間も生ワクチンが5年に対し、シングリックスは少なくとも10年程度と長期持続します。帯状疱疹後神経痛への効果もシングリックスに軍配が上がります。
一方、副反応の頻度は従来の生ワクチンですと1%未満ですが、シングリックスでは約10%の方に筋肉痛、倦怠感、発熱、胃腸症状などが生じます。
接種上の注意としては、生ワクチンでは妊婦や免疫が低下している方(ステロイドや免疫抑制薬を内服している方)には接種できません。
費用は、シングリックスの方が高くなってしまいますが、帯状疱疹の予防効果や持続期間を考えると、不活化ワクチンがおすすめです。
インフルエンザワクチン
インフルエンザの予防対策には、こまめな手洗い、うがいなど様々言われていますが、最もエビデンスが豊富で、予防効果が高いのがインフルエンザワクチンの予防接種です。インフルエンザウイルスは毎年変異が起きて抗原性が変わるので、ワクチンの効果が高い年と低い年ができますが、概ね感染するリスクを50%程度減らします。また、ワクチンの株と実際の流行している株が違った場合でも重症化予防効果は残ると言われています。
効果をより高めたいのであれば、接種時期が重要です。例年12月からインフルエンザの患者数が徐々に増え始め、1月にピークを迎えます。ワクチンの効果は概ね接種2週間後から5か月程度続きますので、12月の本格流行を前に、11月中頃までに打った方が良いでしょう。
妊婦さんはインフルエンザにかかると重症化しやすいので、特に接種をおすすめします。授乳婦さんや卵アレルギーの方も問題なく接種可能です。
院長津田の取材記事がありますので、よろしければこちらもご参照下さい。
肺炎球菌ワクチン
23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)は平成26年10月より高齢者を対象に定期接種となりました。
これまでに23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)を受けたことが無い方が、65歳になる年に市町村からお知らせが届き、ワクチン接種費用の助成が行われます(65歳のタイミングを逃すと次は70歳、その後5年おきです)。
肺炎球菌は、市中肺炎の原因第1位の細菌で、時に敗血症や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こします。近年は新型コロナウイルスの影響で非常に関心が高まっています。予防できる疾患は、ワクチンで予防することが大切です。
なお、ステロイドや免疫抑制剤を内服している方や慢性腎臓病の方では、より免疫の付きやすい13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー®)の接種も推奨されます。主治医にご確認の上、ご相談下さい。
子宮頸がんワクチン
(HPVワクチン)
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンです。
ワクチン接種後に体の広範囲が痛むなどの「多様な症状」の訴えが相次いだことにより、定期接種ではあったものの、2013年から積極的な接種勧奨は控えられていました。しかし、ワクチン接種と「多様な症状」の間に関連性が示されないこと、海外の大規模調査で子宮頸がんの予防効果が示されていることなどから、2021年以降積極的勧奨が再開されることになりました。
子宮頸がんは20-30代に多いがんで、ちょうど出産時期と重なることから「マザーキラー」とも呼ばれます。
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスが主に性行為を通じて感染するため、性交開始前に打つことが最も効果的です。日本では小学校6年生〜高校1年生の女子が定期接種の対象になっていますが、それ以降の年齢の方でも接種可能です。ヒトパピローマウイルスは子宮頸がん以外にも、肛門がんや中咽頭がん、陰茎がん、膣がん、尖圭コンジローマや再発性喉頭乳頭種(再発性呼吸器乳頭種)など様々な疾患の原因となりますので、積極的な接種をおすすめいたします。
日本で承認されている子宮頸がんワクチンは3種類あり、それぞれ次のような特徴があります。
サーバリックス®
定期接種(対象) /任意接種 |
定期接種(小6~高1の女子) |
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価数 | 2価 |
予防する疾患 (ウイルス型) |
70%の子宮頸がん(16,18型) |
接種方法 | 筋注 |
接種スケジュール | 3回(0,1,6ヶ月) |
対象 | 10歳以上の女性 |
ガーダシル®
定期接種(対象) /任意接種 |
定期接種(小6~高1の女子) |
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価数 | 4価 |
予防する疾患 (ウイルス型) |
70%の子宮頸がん(16,18型) 肛門がん、尖圭コンジローマ(6,11型) |
接種方法 | 筋注 |
接種スケジュール | 3回(0,2,6ヶ月) |
対象 | 9歳以上の男女 |
シルガード9®
定期接種(対象) /任意接種 |
任意接種 |
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価数 | 9価 |
予防する疾患 (ウイルス型) |
90%の子宮頸がん(16,18.31,33,45,52,58型) 尖圭コンジローマ(6,11型) |
接種方法 | 筋注 |
接種スケジュール | 3回(0,2,6ヶ月) |
対象 | 9歳以上の女性 |
院長津田の取材記事がありますので、よろしければこちらもご参照下さい。
風疹ワクチン
風疹ワクチンは国の予防接種政策のゆらぎにより、受けられていない方がいらっしゃいます。
このため、昭和37年度~昭和53年度生まれの男性の皆様に、お住まいの自治体から、原則無料で風しんの抗体検査と予防接種が受けられるクーポン券が送られています。
風疹は、成人がかかると重症化しやすく、時に命の危険や後遺症が残る危険な疾患です。また、妊娠初期(20週頃まで)の妊婦が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が起きることがあります(先天性風疹症候群)。
男性の皆さまは、奥様の妊娠がわかったら、ご自身の母子手帳を確認し、風疹ワクチンを2回うけているかご確認下さい。うっていない方はぜひ接種をおすすめします。